シチリア州(Sicilia)

 

シチリア州(Sicilia)

 ヨーロッパの近代陶芸(※)の始まりは、イスラム(本拠地古代ペルシャ)から長い道のりを経て多種多様の風土の影響を受けながら形を変え、ヨーロッパ各地に広まったと言えます。この近代陶芸が広がる過程で14〜15世紀にスペインのマニセスからイタリアへ大量に流入した陶器が、フィレンツェのルネッサンスの造形芸術として発展しました。この陶器が後にマジョリカ焼と呼ばれ、イタリア各地へと広がっていきました。

 

 ただ、イタリアの中でシチリアだけがこのフィレンツェを中心とする流れより少し早く、11〜13世紀に近代陶芸が広まったとされており、それを辿っていくと827年から始ったイスラム支配の時代にその技術がもたらされたと考えられています。
 このシチリアの近代陶芸は、その後ルネッサンス様式もを取り込み、イスラムスタイルと混合した独自のデザインを築いて16世紀後半〜17世紀前半にかけて各地で発展していきました。パレルモ、シャッカ、トラパニなどでその窯跡が発見されていますが、最も大きな発展を見せたのはカルタジローネであり、今もなお盛んな製陶活動が続いています。

 

 イスラムの支配下で花開いたカルタジローネは、1627年の飢餓、1693年の大地震で衰退をしてしまいましたが、18世紀に活気を取り戻し、現在でもシチリアだけでなくイタリア、ヨーロッパにとっても重要な製陶地となっています。

 

※ 何をもって近代陶芸というかの解釈は幾つかの説がありますが、土をそのまま焼いていた土器ではなく、釉薬(うわぐすり)の技術を用いて装飾性を重視して作られるようになった陶器、という説が有力です。

 

 

カルタジローネ大階段

カルタジローネ大階段

 

 

 ここカルタジローネには陶器のタイルで彩られた142段の大階段があり、陶器好きの方にはぜひ訪れていただきたい街です。その下に立って階段を見上げた時の感動は、とても言葉では言い表せません。この大階段が完成したのは20世紀になってからだと言われていますが、使用されているタイルの製造年は古いものから新しいものまで混ざっており、15世紀のものも含まれています。また、カルタジローネには州立陶器博物館(Museo della Ceramica)もあり、各年代の陶器を見ることも出来ます。

 

 

カルタジローネ陶器博物館

カルタジローネ陶器博物館

 

 

 現在においてカルタジローネと並んで発展を見せているのは、サント・ステファノ・ディ・カマストラです。こちらは新しく18世紀に開かれた製陶地で、カルタジローネに比べるとイスラムなどの影響は薄く、レモン柄など南イタリアらしい鮮やかで伸びやかなデザインが見られます。

 

 

サント・ステファノ・ディ・カマストラ定番 レモン柄

サント・ステファノ・ディ・カマストラ定番 レモン柄

 

 

サント・ステファノ・ディ・カマストラ 溶岩石のテーブル

 また、この産地では溶岩石を使った製品も生産しており、その強度が強いことからタイルやテーブルなどに使われています。パレルモとメッシーナの中間あたりにあり不便なところですが、明るい色彩の普段遣いの食器をお探しならぜひ訪れてみて下さい。

 

サント・ステファノ・ディ・カマストラ 溶岩石のテーブル

 

 

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波のように草が巻いている文様はカルタジローネの典型的なパターンである。イスラムの影響を受けた「孔雀の羽根の目文様」も頻繁に見られる。

 

 シチリアの陶器は、イタリアでありながらイタリア本土とは全く違った歴史を歩んでおり、まだまだこれからの研究で新しい発見が増えることでしょう。イスラムからもたらされた近代陶芸は、ヨーローッパ各地でその影響を見て取ることができますが、シチリアほどその影響が濃く出ている産地はないと言えます。シチリア陶器は、近代陶芸を遡ってチュニジア〜イスラム〜シルクロードへと辿る入り口でもあるのです。

 

 

 

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