アトリエ紀行 vol.1

2009年08月20日

芸術家たちの集った コート・ダジュールを訪ねて
〜陶芸の村 ヴァロリス〜

 

 フランス南部トゥーロンからカンヌ、ニース、モナコ公国、そしてイタリア国境まで続くコート・ダジュール。地中海の温暖な気候に包まれたこの海岸地帯は、年間で雨のふる日が75日以下というまさに太陽が海に降り注ぐ場所。
 青い海と陽光に魅せられた芸術家たちも次々とこの地を訪れ多くの作品を残していきました。ルノワール、マティス、シャガール、コクトー、ミロ、そしてピカソ。コート・ダジュールにはそんな芸術家たちの名作を収蔵する美術館や彼等の足音を感じることができる場所が数多くあります。
 今回は彼等の残した陶芸や建築を追ってカンヌ北部のヴァロリスから東へと車を走らせイタリアとの国境の町マントンまで旅しました。

 

 パリからドメスティックに乗り継いでニースのコート・ダジュール空港へ、あるいはパリのリヨン駅から国鉄SNCF、TGVでニース駅へ。私はTGVでゆっくり(と言っても時速300kmを誇る)フランスを南下する旅をお薦めします。
 ただし、パリを出てちょうど降りたくなる2時間あたりのリヨンで出来心をおこさないように...ちょっと降りて美味しいものを食べてからゆこうかしら、ピラミッドやジョルジュ・ブランは遠いけれどアラン・シャペルかレオン・ド・リヨンなら...と結局リヨンに一泊もしくは二泊することになりニースからの日程が大変なことになります。ここはコート・ダジュールの青い海を夢見ていっきにニースまでゆきましょう。

 

 ニースからヴァロリスまでは車で30〜40分程度です。TGVの場合は手前のカンヌで下車してそこから車で15分です。コート・ダジュールは全体に治安が良いとされていますが、ヴァロリスはそうとは言えません。スリ、置引きが多いのでご注意下さい。少し前にも日本の雑誌社が取材中にレンタカーの中に荷物を置きっぱなしにしてごっそり持っていかれたそうです。

 

 

ヴァロリス Vallauris

ヴァロリス Vallauris
 ヴァロリスは良質の土が採れることで中世から陶芸がさかんな村でした。15世紀にはペストから逃れたイタリアの陶芸家たちがここに住みつきその技術を発展させました。18世紀の後半には洗練されたルイ15世風の食器を作るようになり、その独自の光沢感のある釉をかけた作風は今でも一部の窯で作られています。20世紀に入るとピカソやコクトー、レジェなどがここを訪れ陶芸活動をしています。

 

 ピカソは1946年にアンティーブを訪れ、グリマルディ家の城にアトリエを構え制作活動を始めます。この時に制作した絵画やリトグラフなど50点余りはこのアトリエ跡を美術館にしたピカソ美術館(Musee Picasso Chateau Grimaldi) にて見ることができ、この中に何点かの陶芸作品もあります。

 

 そののち1948年にヴァロリスに入ったピカソはそれから8年間をここでの陶芸活動に費やしました。

 

 

ギャラリーマドゥーラ Galerie Madoura

ギャラリーマドゥーラ Galerie Madoura
 ピカソがマドゥーラ氏と共同で構えたという窯(アトリエ)で、現在はギャラリーになっています。数年前まではマドゥーラ氏の子孫がピカソのレプリカを制作していましたが、今はしていないそうです。ピカソの作品とそのレプリカが展示され、見学も可能ですしレプリカについては希望すれば購入することも出来ます。ですがレプリカといえども手ごろな価格ではないようです。

 

 ピカソの作品の写真をいろいろ見せていただきました。これは一部ポストカードにもなっていてギャラリーで販売しています。ここで見たピカソの陶器にはコバルト(濃い青)とコッパー(酸化銅=緑)の顔料が多くの作品に使われています。焼き物ならではの特色あるこの2つの顔料に興味を持ったのでしょうか。それとも、コート・ダジュールの色といわれる青、緑、黄に影響を受けたのでしょうか。そういえばピカソの生まれたスペインのマラガも光と海に溢れた地中海沿岸の町でした。

 

 町の広場近くには国立ピカソ美術館(Musee National Picasso) があります。ピカソの絵皿や壷が数多く展示されています。色彩やモチーフが溢れ出んばかりに描かれた絵皿、見ている間に動き出して形を変えてしまいそうなユニークな壷。ピカソの陶器には顔が描かれたものがたくさんありました。ひと、さかな、フクロウ、ヤギ、牛。それらの顔はどれも子供の絵のようにおどけていて楽しいものです。

 

 広場からゆったりと下る通りの両側には陶器のショップが軒を列ねています。通りの終わりまではゆっくり歩いて20分程度、ただしこれはただ歩くだけの場合です。1件1件覗いているとあっという間に1〜2時間は経ってしまいます。お土産物的なショップが多いのですが、よくみるとそれぞれに特徴があり興味深いのです。中にはアーティストのデザインした陶器を扱うショップやギャラリーもあります。

 

 

GALERIE SASSI-MILICI

GALERIE SASSI-MILICI
 アーティストの作品を扱っているギャラリーで、フランスでは1〜2年前から注目されているそうです。
絵皿や壷からオブジェまで実に様々な作品が展示されています。私はここでR・CAPRONという作家の顔をお皿にしたシリーズが気に入りそのうちの1枚を購入しました。ほかにも小さいオブジェやモチーフを浮きぼりにしたお皿など欲しいものがあったのですが、価格も決して安くはないし割れ物をそうたくさん持ち歩くわけにも行かないので諦めました。でも、希望すれば丁寧にパッキングして日本まで送ってくれるそうです。

 

 ここのオーナーは陶芸好きの日本の元総理大臣と交流があるそうで、陶芸の手ほどきをしたというオーナーが自慢げに写真を見せてくれました。この元総理大臣はどのくらい凄い人なのかと聞かれたので、”任期の短さでは誇れるものがありますね”と言おうとしましたがオーナーがあまり自慢げにしているので ”彼の対応はスピーディーだ” と答えておきました。

 

 

boutique capron

boutique capron
 私の気に入った作家CAPRONのショップです。ここは一般向けの食器類を扱っています。ターコイズブルーの釉の発色がとてもきれいでした。そしてやはりコート・ダジュールの青、緑、黄の配色の食器が中心になっていました。

 

 ヴァロリスは小さい町ですので半日あれば回れますが、できれば1日とって美術館やギャラリー、ショップをゆっくり見てはいかがでしょう。1日あればアンティーブにも足がのばせると思います。レンタカーであればランチをカンヌまでというのは十分可能です。でも、食後についクロワゼへとショッピングにはまりそうな方は危険ですので御注意を。

 

次回は、アンティーブ、モナコ、マントンをご案内します。

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